感の生成研究会
現代社会において、電子メディアによるイメージ・表象の氾濫によりリアリティが喪失され、意識が簡単に操作されてしまう危険性が指摘されて久しい。とくに、こうした現代的条件下で生まれ育つ若い世代への影響には深刻なものがある。若者の間で「生の実感」が喪失されつつあることは、さまざまな要因が複合しあっているものの、その結果だといえる。こうした事態に対して、やはりイメージ・表象の技である芸術・音楽ないしはデザインは、「生を感じる」ことに関してどんな貢献ができるのだろうか。本研究会は、こうした問題意識のもとで、学校教育の枠組みにこだわることなく、また、芸術ジャンルを越境する方向性を目指し、若い世代間の、または若い世代と大人世代の間の、芸術を媒体としたコミュニケーションの可能性を模索していきたい。
2006-継続中
本研究会は、学校と文化機関が持続的に協力しあって展開している日本や海外のワークショップ、教育プロジェクトを考察対象としながら、教育と文化をつなぐ新しい回路を模索することを第一の目的としている。研究会は、教育学者、中学校の音楽及び美術科教師、美術館学芸員、精神医学者、音楽療法士からなっているが、教育と文化を結ぶ際、分断されがちな関係諸分野のあいだに共通の言葉を確立しようという試みでもある。
研究会の名称「感の生成」の「感」とは、「感覚」「感情」の双方を意味する。これは、今までの学校教育で主題的に取り上げられてこなかったものである。この名称には、こうした意味での「感」の育成を、文化(しかしそれが何かはまた問題ではあるのだが)を媒介にしながら、模索したいという意図が込められている。