慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

1970年代アートの記録―Video Information Center を中心に

VIC(Video Information Center)のビデオライブラリーのアーカイヴ構築と、VICの活動に関する調査研究を行うプロジェクト。VICのライブラリーは、1970-80年代のパフォーマンス・展覧会・シンポジウムなどを記録した約1,200本のテープによって構成され、「高松次郎のアトリエインタビュー」、「ナムジュン・パイクの制作現場でのインタビュー」、「菅木志雄イベント(1975)」などを含んでいます。

★ 2016年度の活動報告書(PDF)

  • 2015年-(継続中)

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    本間・久保

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プロジェクトの活動

2016年度

平成28年度 文化庁 我が国の現代美術の海外発信事業「我が国の現代美術の戦略的発信に向けた現代美術関連資料の整理・ 情報収集」の支援を受けて下記の活動を実施した。

  1. VIC関連資料収集・関連運動調査:VICに関わる紙媒体等資料の収集、整理、保存を実施するほか、関連運動に関する調査を実施
  2. ビデオ・テープのデジタル化(40本)
  3. VIC資料関係者および研究者らへのヒアリング
  4. ビデオテープのインベントリー整備
  5. 情報発信:報告書『1970年代日本美術関連資料の整備:VIDEO INFORMATION CENTER』を発行、VICの年譜、テープのインベントリーをバイリンガルにて発信
  6. デジタル・データの保存・公開・利用に関する検討:人文情報学研究所永崎研宣氏、渋沢栄一記念財団情報資源センターの茂原暢氏、デジタル・ヘリテージデザインの村松桂氏にデジタルデータの長期保存や、公開・活用に関する取り組みについてヒアリングを実施/文化庁 国際シンポジウム「日本の現代美術を支える―未来へ・そしてレガシーへ」にて活動を報告

2016年度の活動報告書(PDF)ビデオライブラリ 目録

2015年度

ビデオテープの調査および整理を実施。


プロジェクトの概要

Video Information Center資料

VIC(Video Information Center | 1972-現在)は、1972年に国際基督教大学の学生団体から出発し、当時普及し始めた記録メディアであるビデオを用いて、多種多様なイベントの記録および実験的なテレビ放送(アパートでのCATV放送の試み「パラビジョン10」1978年 等)を行った団体である。

VICのビデオ・ライブラリーは、1970-80年代のパフォーマンス・展覧会・シンポジウムなどを記録した約1,200本のテープによって構成される。「アーティスト・ユニオン・シンポジゥム '76」、「高松次郎のアトリエインタビュー」、「ナムジュン・パイクの制作現場でのインタビュー」、「菅木志雄イベント(1975)」などが含まれるこれらのテープは、VICが自主企画した上映会で上映されるほか、1979年にはニューヨーク近代美術館での展覧会「ビデオ:東京から福井と京都まで」にも出品されている。

この展覧会には、VICと同年に設立された「ビデオ広場」からも中谷芙二子、山口勝弘らが出品しているが、VICを紹介するテキストの中で、VICの撮りためたビデオテープが「アーカイヴ」として明確に呼称されている点も興味深い。

VICは、パフォーマンスや演劇、そして1960年代から数を増す一過性の形体をメディアとする作品群にカメラを向けた。現代において、これらの作品を参照するよすがとなるのは唯一、印刷物や写真、映像等の「資料」だけである。その意味でVICのビデオ・ライブラリ(あるいは「アーカイヴ」)は、1970年代の日本美術に関する研究や、近年増加している当該領域への国際的関心に、たしかな資料的基盤を提示する資料体ということができる。

プロジェクトの取組

  • ビデオテープのデジタル化
  • VICおよび同時代の関連運動の調査
  • インベントリーの改訂

VICのテープ群は現在、慶應義塾大学の収蔵庫に保管され、既存のインベントリーとの照合作業・ラベリングなどの基礎的な整理作業が終了している。

2016年度の作業の中心となるのは、テープのデジタル化である。内容の確認に再生機材を必要とするビデオ・テープは、紙や写真など他媒体の資料以上に、デジタル化が保存・活用にあたって本質的な役割を持つからである。

VICテープ群のうち、主に舞台芸術関係のテープは、過去にも何度かデジタル化されているが、今回は、VICが映した記録だけではなく、VICを映した記録を一つの基準としてデジタル化対象の選定を行っている。というのも、その活動および資料の重要性に比して、VIC自体について、またその美術史的位置づけについては、これまで充分には語られてこなかった。そのため、今回のプロジェクトでは、VIC自身の活動を捉えたテープのデジタル化に加えて、資料の調査、関係者(VIC代表手塚一郎氏ほか)へのヒアリング、ビデオ広場など同時代の運動との比較を通じて、VICの活動をもう一度掘り下げたいと考えている。

資料体情報の発信・活用に向けて

  • バイリンガルでの情報公開
  • 活用に向けた関係者との協議
  • デジタルデータの活用
  • 保存方法の検討

VICの概要とインベントリーからなる小冊子を日英バイリンガルで作成し、同一の内容をウェブサイトにも掲載する。情報の公開後も、日本の芸術資料情報の流通促進に取り組むグループ、また国外の日本研究者のメーリングリストなどに情報提供を行うなど、資料体の存在とその内容を積極的に発信することが必要だろう。

デジタル化したテープは、アート・センターアーカイヴ内で研究閲覧ができるよう調整している。

また、インベントリーが公になることで、貸出や上映、また未デジタル化テープのデジタル化など、テープの利用について様々なリクエストが寄せられる可能性がある。その際の基本的な対応について、関係者と引き続き協議していく。

また、デジタルデータを長期的に活用していくための技術的な課題についても、ワーキング・グループを開催して検討を進めたい。