慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

脇田愛二郎《HELIX-924K》湘南藤沢中等部・高等部屋外彫刻洗浄保存処置

本学では2001 年度より三田キャンパスの屋外彫刻洗浄保存を専門家に依頼して実施し、その後各キャンパスと一貫教育校に設置されている屋外彫刻についても処置を進めてきた。現在では二年に一度の頻度で洗浄および保存処置を行っている。本年度は三田キャンパス5点、日吉キャンパス4点、 矢上キャンパス1点、湘南藤沢キャンパス1点、普通部1点、 中等部3点、志木高等学校2点、幼稚舎2点、湘南藤沢中等 部・高等部1 点の計20 点の洗浄保存処置を行った。二年前に処置を実施した作品に加え、本年度は日吉下田グラウンドにある《日本ラグビー発祥の地記念碑》石柱の洗浄およびブロンズ像の調査と、湘南藤沢中等部・高等部の脇田愛二郎 《HELIX-924K》の2点の調査洗浄保存処置を新規に実施した。

保存観察記録
2022年5月5日
*作業期間 2021年11月5日~ 2022年3月11日
*記録者 ブロンズスタジオ・黒川弘毅
*作業者 黒川弘毅、伊藤一洋、篠崎未来、髙嶋直人、 高木謙造、宮本颯

 



湘南藤沢中等部・高等部屋外彫刻洗浄保存処置
*調査・作業期日 2022年2月25日

●作品
作者=脇田愛二郎
作品= HELIX-924K
材質・技法=鉄 等
制作年= 1992 年

●作業前の状態
*表面の状態
塗料表面の退色が進行している。上部は下部に比較してチョーキング(粉状化)が顕著であり、下部より白味が強く見える。布で表面をこするとチョーキング層の下からオリジナルの色調に近い塗料表面が顕れる。日照を受けない北向きの表面は、降水の流路に沿って黒味を帯びた付着物の条痕が形成され、外観を悪化させている。顕微鏡で観察するとこの個所には微生物の生息がみられた。多くの発錆個所が作品の角部と下方にみられる。上方の発錆個所は塗膜の剥離が生じてさびの流れ出しがみられる。下方の発錆は打撃による塗膜損傷に起因するものがほとんどであると思われる。接地部分のシーリングとの間隙には層状さびの顕著な形成がみられた。

*鳥の排泄物 なし。
*人為的キズ・落書きの個所 スクラッチによる落書きがある。
*穴・亀裂の個所 認められない。
*内部からの噴出・析出物 なし。
*破損・欠失個所 なし。
*その他の異常 なし。
*変形個所 なし。
*固定状態 良好。

●作業の基本方針
頂部までの作業範囲を確保できないが、ローリングタワー(3 段、高さ約6m)を架設して調査洗浄をおこなう。

●作業内容
1.洗浄作業
  高圧洗浄機を用いて洗浄した。

●作業結果
高圧洗浄により塗料表面のチョーキングが除去され、色調は彩度が僅かに増加した。黒味を帯びた付着物とその条痕は除去された。高圧洗浄機のノズルが届かない最上部は付着物が除去できず、汚れが残った。

●保存上の留意事項
塗料の退色が進行しており、表面にチョーキングがみられる。塗膜剥離と発錆が多く発生し、とくに接地個所の層状さびは深刻な金属の腐食が進んでいることを示している。再塗装を早めに実施する必要があると思われる。
 

写真は左から
図1 《HELIX-924K》作業前各部
図2  作業後各部
図3  発錆箇所
図4  洗浄

日付

2022年2月25日


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