慶應義塾大学アート・センター Keio University Art Center

岩田健《ピーターパン》幼稚舎野外彫刻洗浄保存処置

 本作品は、慶應義塾幼稚舎にて長く(1963-87)教鞭をとった岩田健(1924-)によるもので、《ピーターパン》は自尊館前、《渚の姉弟》は正門の生垣に設置されている。
 本年度初めて、アート・センターを通じて専門家による状態確認と洗浄保存処置を行った。



保存修復作業記録

2017年5月12日 ブロンズスタジオ・黒川弘毅/担当者 黒川弘毅・伊藤一洋

作品

作者=岩田 健
作品=ピーターパン
材質・技法=ブロンズ
記名=「岩」のモノグラム


【作業前の状態・表面の状態】

・表面の状態:当初の塗料が優勢に保たれている。塗膜の表層にある濃緑色の消失と中層の淡青色の出現が進行している。これらが剥離した部分には、下層の黒色や褐色がみられた。 表面には黒い沈着物がみられ、赤褐色をした土壌性粉塵の付着が顕著であった。 接触による塗膜の喪失箇所が各所に多く分布し、茶色いクプライト(酸化第一銅)の金属表面が露出している。自然の発錆(銅の硫酸化合物・塩化物等)は、目視で顕著には認められなかった。
・鳥の排泄物:痕跡が見られた。
・人為的キズ・落書きの個所:なし。
・ピンホール(鬆)・穴・亀裂の個所:顕著なものは認められない。
・内部からの噴出・析出物:なし。
・破損・欠失個所:なし。
・変形個所:なし。
・その他の異常:認められない。
・固定状態:良好。


【作業の基本方針】

ワックスを加熱塗布して着色を補整し、既存の塗料を保護する。


【作業内容】

1.洗浄作業:非イオン系洗剤(商品名:シンプルグリーン)を用いて洗浄した。
2.保護剤塗布作業:蜜蝋を全体に加熱塗布し、光沢を調整した。
使用材料  蜜蝋、リグロイン


【作業結果】 

表面の沈着物・付着物が除去され、穏やかな光沢が生じ、外観が改善した。
 

写真は左から
写真1:作業前
写真2:作業前 各部
写真3:ワックス塗布
写真4:作業後

日付

2017/5/12