アート・アーカイヴ資料展XVIII 土方巽、トリックスター/肉体の叛乱1968ー2018
慶應義塾大学アート・センターでは、2008年に「1968年」展を開催し、土方巽の舞踏公演〈土方巽と日本人〉をめぐってアーカイヴ資料を紹介しました。限られた資料を展示するとともに、1968年10月に日本青年館で行われたこの公演が〈肉体の叛乱〉と呼称されるようになる経緯を探り、ひいてはこの舞踏公演の意味を問いかけました。
公演に先立ち、自らを「ニホンのオドリのオリジン」と宣言した土方巽は、1965年の田代での「鎌鼬」の撮影、初の暗黒舞踏派による公演「バラ色ダンス」、高井富子舞踏公演「まんだら屋敷」などで「民俗日本」を追求してきて、満を持しての1968年の〈土方巽と日本人〉であったはずです。
しかし、舞台に顕著だったのは「肉体」でした。「暴力」と「倒錯した性」の肉体が露呈され、日本青年館の満員の観客の歓声は、同じ年、同じ月の東京の街頭や大学構内でのシュプレヒコルと交錯したといえます。
舞台の上の肉体は反乱したのです。しかし、土方巽の舞踏は、ただ斑状にあって、舞台上の真鍮板のように光を乱反射させただけだったのかもしれません。そして、翌69年1月、東大・安田講堂の攻防と落城。2月、磐梯熱海温泉で舞踏家の若者2人の焼死。こうして、〈肉体の叛乱〉の数カ月後に時代が変転します。
本展では、1968年の〈肉体の叛乱〉を呈示しつつ、1970年代のダンスの構造と方法の大変革に向かう、その後の2年間の土方巽も探ります。その後の2年間の土方巽の肉体は、拐引されるようにフィルムやグラビアに集中的に収められ、「魔神」とも「悪霊」とも「呪術師」とも「奇形児の王」とも呼ばれて、異形の土方巽がメディアに氾濫したのです。土方巽自身は「犬の静脈に嫉妬する」と言って、自らを「不具者」でありたいとも述べています。はたして、土方巽は「アブジェクト(おぞましきもの)」であったのでしょうか、「トリックスター」であったのでしょうか。
いずれにしても、〈肉体の叛乱〉から50年後の2018年に至って、土方巽の舞踏をアブジェクシオン、つまり「復活劇」として評価するかのように、二つの舞台作品が現れています。一つは、Choy Ka Faiの“UnBearableDarkness”(〈存在の耐えられない暗黒〉)であり、もう一つはAMAREYA THEATREの”DEADMAN EATING WATERMELON”(〈スイカを喰らう死者〉)です。
本展では、映像展示と実演によって、この二つを紹介します。
「私は私の作品」と主張していた土方巽は、50年後の今日においても「文化英雄」であるのでしょうか。「土方巽」をめぐる展示がいつでもそうであるように、本展でもまた、「土方巽とは誰か」「土方巽の舞踏とは何だったのか」をめぐって再考します。
展覧会フライヤー(PDF, 3.0MB)
写真:「鎌鼬」より 撮影・細江英公
日時
2018年10月1日(月)~11月2日(金)11:00-18:00
場所
慶應義塾大学アート・スペース
対象
どなたでもご参加いただけます
日時
2018年10月1日 [月] ー 11月2日 [金](土・日・祝日休館)
11:00〜18:00
場所
慶應義塾大学アート・スペース
〒108-8345 東京都港区三田2-15-45 慶應義塾大学三田キャンパス南別館1F
最寄駅:JR山手線・京浜東北線田町駅、地下鉄三田線三田駅、大江戸線赤羽橋
対象
どなたでもご参加いただけます
費用
入場無料
お問い合わせ
慶應義塾大学アート・センター
Tel: 03-5427-1621
pj.ca.oiek.tsda@ijnet-ca
主催・共催など
主催:慶應義塾大学アート・センター