映画の/と時間 その8 『アクション映画の原点 ルイ・フイヤードの魔力』
800タイトルにもおよぶ驚異的な作品数で知られるルイ・フイヤード(1873-1925)。にもかかわらず、その作品は片鱗たりとも触れることができなかった。その映画史の大いなる空白に、いま初めて光をあてる。
D・W・グリフィスが新大陸アメリカで『国民の創生』や『イントレランス』を撮影していたころ、旧大陸ヨーロッパではひとりのフランス人が精力的に映画を撮りまくっていた。かの淀川長治氏が幼少のみぎりに『ジゴマ』などと一緒に見たという、あの『ファントマ』の創造者ルイ・フイヤードである。
その後、名前だけ囁かれこそすれ、誰ひとりその作品に接することができないまま、ほぼ1世紀が過ぎた。映画史はいわば創世記の記憶の大半を欠いたまま、その後の歩みを続けたのだった。とりわけ「活劇」という、本来もっとも映画的であるべきジャンルは、この欠落ゆえにみずからの正統性を主張しえず、結果として映画は演劇理論に翻弄されたり、「前衛芸術」への逸脱を許したり、プロパガンダの具と化したり……と迷走を余儀なくされたのではなかったか。
フイヤードを正しく見直すこと、それは映画史を正しくふりかえることにほかならない。
日時
2004年5月14日
場所
三田キャンパス 北館ホール
対象
登壇者/出演者
講師:坂尻昌平(映画研究家)、司会:藤崎康(映画評論家)
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主催・共催など
慶應義塾大学アート・センター|映画理論研究会