慶應義塾大学アート・センター　Keio University Art Center

中嶋興の《MY LIFE》は1971年に制作が開始され、約50年を経た現在も制作が続いている未完の作品である。現在までに数度パッケージ化されている。代表的な版としては1976年版、1982年版、1992年版、2012年版、2014年版、2019年版等が挙げられる。それは中嶋の父親の死と息子の誕生を契機に制作開始された家族を対象としたモノクロの映像作品である。1977年、熊本の熊日画廊にて初公開。家族を中心的な対象に据えた膨大な記録映像を数十分に縮約し、2画面に分割して見せる作品である。中嶋はアーティストであるとともに、未完の「MY LIFE」へと折り畳まれる膨大な資料群を制作するひとりのアーキヴィストでもある。

《MY LIFE》を新たに制作するために、勉強会としてのイベントを行う。最新作において重要な点は、中嶋本人だけではなく、本人以外の人物達がそれぞれの編集による新たな《MY LIFE》の制作を行う点にある。

《MY LIFE》は芸術史やメディア史においてどのような位置を占めるのだろうか。ビデオが一般化し、生活になくてはならなくなった現在において、改めてビデオとそのアーカイヴについても考え、その可能性の中心を探る。

*本イベントは、非公開だが、事後記録配信を予定している。
**令和4年度メディア芸術アーカイブ推進支援事業「中嶋興/VICを基軸としたビデオアート関連資料のデジタル化・レコード化III」の関連イベントである。

2023年1月22日13:30-16:30

第1部 13:30-14:30：《MY LIFE》鑑賞
第2部 14:30-15:30：オブジェクト・シアター（好光義也＋権祥海）《千代に、八千代さんに》の鑑賞と議論
第3部 15:30-16:30：NEW 《MY LIFE》についての議論

参加者：中嶋興、飯田豊、井上雄士郎、奥村雄樹、小倉達郎、木村麻悠子、久保仁志（司会）、Eugene Kwon、瀧健太郎、中川陽介、原塁、松房子、山腰亮介、山田健二、好光義也

本企画は、戦後日本の実験映画とビデオ作品（1950-1980s）のカタロギングを諸機関と連携しながら行うCCJ（コラボラティヴ・カタロギング・ジャパン）との共同企画である。CCJでは当センターでデジタル化を行った中嶋興の映像を特集した以下の企画が行われている。
JANUARY MEMBERS' VIEWING: KO NAKAJIMA PART 1
FEBRUARY MEMBERS' VIEWING: KO NAKAJIMA PART 2
MARCH MEMBERS' VIEWING: KO NAKAJIMA PART 3
APRIL MEMBERS' VIEWING: KO NAKAJIMA PART 4

以下CCJより。
CCJのViewing Libraryのベータテスト版ローンチを記念して作家中嶋興氏と松房子氏、キュレーター、バーバラ・ロンドン氏、研究者アレグザンダー・ザルテン氏を迎えたディスカッション＋作品上映を行います。さらに1月中は中嶋氏とのパートナーシップで作品、《MY LIFE》を無料配信をいたします。
 メンバーズ・オンリーの配信では慶應義塾大学アート・センターが近年デジタル化した中嶋氏の作品を1月から4月に渡ってスタディーをします。1月は慶應義塾大学アート・センターが行う「My Life Study」と関連してメンバーズには《MY LIFE》に関する作品、映像資料を提供します。

※CCJ （Collaborative Cataloging Japan）：2015年に設立されたアメリカ、フィラデルフィアの非営利団体、コラボラティブ・カタロギング・ジャパン（CCJ)は戦後日本の実験映画とビデオ作品（1950-1980s）を所蔵するコレクション、及び美術館、大学、図書館、アーカイブ、個人コレクションと一緒に記録や保存に関する課題を考え、ソルーションへ向けて活動をします。そして研究者や一般へその資料のアクセスを提供することを目的としています。そのコレクション機関や個人とパートナーシップをくみ、統一的メタデータの抽出を考えることで共有可能なデータベース制作へのインフラ構築を目指します。その記録制作の作業に加えCCJは作品自体の保存のサポートを通し実験映像レガシーのメインテナンスのアシストをします。さらに日本国外での展覧や上映プログラムを通してレガシーの海外で紹介をします。また関連資料を一般に公開するプランによって世界のキュレーター、アーキビスト、研究者、アーティスト、学生のリサーチに貢献することを目標としています。