富士ゼロックス版画コレクションによる
鉄を刷る――E.チリダ、R.セラ、若林奮
展覧会
エドゥアルド・チリダ、リチャード・セラ、若林奮は三人ともに、鉄を素材とした彫刻を中心にその芸術表現を実践してきた作家たちです。しかも、鉄の素材性を生かし、それと対話し、その素材感や重量感を強く感じさせる作品を展開しています。そしてどの作家においても金属面を意識させる特徴が作品に見出されるのです――チリダの量塊を強調するような無垢な鉄の表面、セラのカーブを描いて屹立する鉄板、若林の斜めに設置される鉄板や横たえられる太い角柱状の鉄塊。このように金属面を意識した鉄の作家三人が別の面である「版」にどのように挑んでいるのか、また、そこにどのような表現を求めているのかを探り、紹介しようとするのが本展覧会です。
チリダと若林は金属板を版とする銅版画を制作しています。チリダは自らの彫刻作品の側面を型押ししたかのような、彫刻での金属面が反響する作品を制作しています。一方、若林は金属板に刻みを施す、ドライポイントやエングレーヴィングを用い、彫刻では重量を備えた面あるいは量塊として向き合った金属の板に繊細な対話を求めているかの様です。セラはシルクスクリーンによって、版画を画面というより、物理的な面ととらえた巨大な作品を展開しています。三人の作品には、それぞれが彫刻において鉄と向き合ってきた要素が、三人三様の個性的な形で版画に生かされており、三作家の作品を一同に展示することにより、三人の「版」に対する感覚、表現の共通性や差異を版画を通して鑑賞する好機となるでしょう。