映画の/と時間 その7 フリッツ・ラングの世界——表現主義とナチズムのかなたへ
世界映画史を貫通する巨匠ラングの作品を紹介・分析しつつ、20世紀の歴史を藤崎康が斬る!
「黄金の20年代」と呼ばれるワイマール時代に、『死滅の谷』『ニーベルンゲン』『メトロポリス』などの表現主義の名作を撮り、トーキー移行期の30年代初頭に『M』『怪人マブゼ博士』を撮り上げ、ナチスをのがれてハリウッドへ「亡命」したのちも、リンチ、自警団、赤狩りといったアメリカ社会の暗部をえぐるような、衝撃的なスリラー映画やフィルム・ノワールの傑作を撮り続けたフリッツ・ラング。
かれの映画は、フィルムそれ自体の強度でわれわれを魅了すると同時に、フィルムの背後にひろがる政治的文化的な現象を鋭く透視するがゆえに、われわれの関心を刺激してやまない。20世紀前半同様、さまざまな社会不安が高まりつつある今という時代に、ラングの黙示録的な映画について再考する意義は、まことに大きいといえよう。
2003年11月13日
於:三田キャンパス 北館ホール
講師:藤崎 康(映画評論家)
司会:橋本順一(慶應義塾大学商学部教授)
主催:慶應義塾大学アート・センター/映画理論研究会