身体をキャプチャーする ——表現主義舞踊の時代と今
シンポジウム
マルチ・メディアを急速に展開させている現代は、いわば身体を透明化し、身体を不要としつつある時代である。それでは情報テクノロジーの拡大の歩みは、身体なきテクノロジーへと通じているのか。しかし、身体的コミュニケーションが今日なお決 定的役割を果たしていることは言うまでもない。そもそもテクノロジーの本質も、身体を媒介手段(メディア)として外なる世界に働きかけ、人工物を作りだすことにあったはずだ。
身体表現の追求における最も重要な場面は、1920年代の表現主義舞踊に見いだされる。ルドルフ・フォン・ラバン(1879〜1958)は、身体のモーションをいかにキャプチャーする(とらえ、うつし、しるす)かという問題をたて、画期的なノーテーションを開拓した。メリー・ヴィグマン(1886〜1973)はダンス作品を制作し、自ら踊ることで身体表現の内実を世に問うた。傑作『グリーン・テーブル』を生んだクルト・ヨース(1901〜1979)は、フォルクヴァング舞踊学校を創立し、教育による実践をめざした。20世紀前半における「表現主義舞踊」のこうした革新は、きわめて注目に値する。
本シンポジウムとレクチャーは、マルチ・メディア都市を志向する東京を舞台に、表現主義舞踊とは何であったのか、また現代において何でありうるのかを検証する。
2001年7月12・13日
於:三田キャンパス 北館ホール
講師
- ヴァレリー・プレストン=ダンロップ(ラバン・センター前教授)
- ヘートヴィヒ・ミュラー(ケルン大学演劇博物館)
- パトリツィア・シュテッケマン(ヴィグマン協会理事)
- 松澤慶信(慶應義塾大学非常勤講師)
司会:前田富士男(慶應義塾大学文学部教授/アート・センター所員)
プログラム
2001年7月12日
- セッション2 ヘートヴィヒ・ミュラー「ヴィグマンをめぐって」
- セッション1 ヴァレリー・プレストン=ダンロップ「ラバンの理論」
2001年7月13日
- セッション3 パトリツィア・シュテッケマン「ヨースの仕事」
- レクチャー 松澤慶信「現代における表現主義舞踊」
- ディスカッション
主催
- 慶應義塾大学アート・センター
- 東京ドイツ文化センター
- ブリティッシュ・カウンシル
協力:ルフトハンザ航空