クリエイティブ産業研究:講義記録 [2008]
今野 敏博(レーベルモバイル(株) 取締役 代表執行役社長)
大学の経済学部を卒業後、 (株)CBS・ソニーに就職し、これまでレコード会社の社員としてディレクターやインターネット関連の業務などさまざまな経験を重ね、一昨年からは音楽の携帯配信を取り扱うレーベルモバイルに出向している今野敏博氏は、携帯電話への音楽配信という日本特有の成功モデルを、その背景や前史をふまえて解説。学生にとって身近な音楽受容のなかにあるビジネスについて説明された。
星野 康二((株)スタジオジブリ 代表取締役社長)
日本におけるディズニー(現ウォルト・ディズニー・カンパニー)のコンテンツビジネス創成に携わり、昨年、ディズニーからスタジオジブリへ移籍し、現在、代表取締役社長を勤める星野康二氏が、春学期(5/22)に講義いただいた塚越隆行氏とともに90年代にディズニービデオの製造販売事業で現在のホームエンターテイメントビジネスのモデルを築いた経験や、ディズニーとスタジオジブリの提携の実現に尽力した経験をもとに、ディズニーとジブリのビジネスとこうした仕事の魅力について講義をおこなった。
稲船 敬二((株)カプコン 常務執行役員 開発統括本部長兼オンライン事業統括/(株)ダレット 代表取締役社長)
ゲーム産業界において、数々の人気ソフトとシリーズを生み出してきたカプコンの開発を担う稲船氏に、日本を代表するコンテンツ産業のひとつでありながら、これまで語られる機会の少なかったゲームビジネスについて講義いただいた。氏は、日本のゲーム・ユーザーの特質を指摘するとともに世界市場への道と課題を明確に指摘し、日本のゲーム産業の強さと将来について言及した。
砂川 浩慶(立教大学社会学部 准教授)
社団法人日本民間放送連盟で放送の制度や著作権、地上デジタル放送の実施などに携わり、2006年度より現職にて、放送を中心にメディア産業、メディア政策・法制度、ジャーナリズム論などを教育・研究する砂川浩慶氏を迎え、本講座では触れてこなかった放送業界全体について広く講義いただいた。
迫本淳一(松竹(株)代表取締役社長)
弁護士としてエンターテイメントビジネスに関する法律をアメリカで学んだ迫本淳一氏が、松竹(株)の経営陣へ加わり経営改善のために行った対策、たとえば上映システムの限度や上映期間のコントロールなど、日本の映画ビジネスの振興と、映画産業を世界に広げていくための活動について講義いただいた。
10月30日 音楽ビジネスの構図(レコード会社とヒット曲作り)
飯田 久彦(エイベックス・グループ・ホールディングス(株)取締役)
歌手として音楽産業の表舞台で活躍した経験を生かし、現在は音楽産業の裏舞台で活躍する飯田久彦氏に、時代とともに変化する音楽産業の変遷をアーティストの実名をあげながら時代背景とともに詳説いただき、音楽産業で働く人々についても講義いただいた。温故知新が大切と説く飯田氏は、メジャリーガーのイチロー氏がバッターボックスへ立つ時のテーマソングとして「天城越え」のヒップホップバージョンを作っている。
石坂 敬一((社)日本レコード協会 会長)
本講座の寄附者である(社)日本レコード協会の会長 石坂敬一氏に、日本の音楽産業全体にわたり、歴史や文化的背景を含めたマクロ的視点から講義いただいた。氏は本塾を卒業後、東芝音楽工業(現EMIミュージック・ジャパン)に入社、数々の有名な邦楽・洋楽ヒット曲に関わり、現在はユニバーサル・ミュージック合同会社にて最高経営責任者兼会長を努めている。同時に(社)日本レコード協会会長として業界の発展と公益事業の推進をおこなっている。
10月16日 音楽プロダクションの機能(アーティストの発掘・育成)
大石 征裕((社)音楽制作者連盟 理事長)
マーヴェリック・ディー・シーの代表を努め、音楽制作者連盟の理事長でもある大石征裕氏に、強い思い入れをもって音楽作品を創り、アーティストを世に送りだすことに取り組んできた自身の経験をもとに、プロダクションの業務内容の多様化や、今日のプロダクションがもつ役割を、現場の具体的な例をあげて講義いただいた。
鈴木 淳((有)鈴木淳音楽事務所 作曲家)
「小指の想い出」など数々のヒット曲を生み出し、アーティストをスターに育てる名手として40年以上にわたり音楽産業界で活躍する作曲家の鈴木氏に、自身の作曲家としての仕事とともに、音楽がどのように作られ世の中に出て行くのか講義いただいた。
講義の中では、鈴木氏が作曲した慶早戦90周年記念の応援歌「Blue sky KEIO」や伊東ゆかり、小川知子らの歌うヒット曲と当時のジャケットなどを視聴した。最近の活動であるエイベックスのレーベル「J-more」と所属のアーティスト「ラクシス」にも言及された。
10月2日 音楽のプロデュース (アーティストとともに) 武部 聡志((株)ハーフトーンミュージック&システムズ 音楽プロデューサー)
武部 聡志((株)ハーフトーンミュージック&システムズ 音楽プロデューサー)
音楽プロデューサーである武部氏は、コンセプトの決定、ミュージシャンの選定、作曲などほぼすべての分野に関わり、常に複数の仕事に携っているという。松任谷由実コンサートツアーの音楽監督や、一青窈など数々の人気アーティストのプロデューサーとして、これまで30年余りにわたり2,000曲以上を世に送り、常に第一線で活躍してきた武部氏には、音楽プロデューサーの仕事と日本の音楽業界の中での役割について講義いただいた。
上山 淳((株)EMIミュージック・ジャパン 執行役員法務部長)
実際にレコード会社の法務部で音楽にまつわる権利を扱う専門家の立場から、アーティスト契約を中心に音楽ビジネスの構図を実践的な内容で講義された。
6月26日 アジアにおける日本音楽
谷口 元(エイベックス・グループ・ホールディングス株式会社 取締役)
アジアにおける日本音楽について、エイベックスの活動をもとに講義。実際の企業努力と戦略を詳細にお話いただけたことで、アジアの現状とアーティストの活動や音楽産業を身近な現実として感じ、業界の予想される近未来をイメージすることができた。(記=美山)
スティーヴ マックルーア/Steve McClure(ビルボード アジア支局長)
世界の音楽産業の膨大なデータをもつビルボード。世界の音楽産業について、国や企業、アーティストや需要者の動向について、氏の視点から講義された。音楽を愛するマックルーア氏による講義は、学生に業界の時流、希望や夢と現実を切実に感じさせる内容となった。
5月29日 クリエイティブ産業を考えるために―テレビCMをもとに
河島伸子(同志社大学経済学部 教授)
同志社大学の文化経済の授業でクリエイティブ産業(映画、音楽、放送、広告、ファッションなど)を取り上げている河島氏による、テレビにおける広告産業の構造と創造性とのかかわりについての講義がおこなわれた。実際に海外のCMや日本の過去のCMを提示し、表現とその背景について考察した。
塚越隆行(ウォルトディズニースタジオ ホームエンターテイメント 日本代表)
最初に企業集団としてのディズニーの全体像を紹介。世界の人々にもっと楽しんでもらえるようディズニーがそのブランドを用いておこなっている試み、その戦略や手法を詳細に紹介。さらに塚越氏ならではの視点から日本の映像産業の将来について言及した。
一山直子(知的財産戦略推進事務局 参事官補佐)
知的財産戦略推進事務局は、日本の高いコンテンツ創造力をグローバルに展開し、わが国の国際競争力の強化と、経済の活性化を国家戦略として推進するため内閣に設置されている。その基本理念と戦略についてと、日本のコンテンツ産業の現状、今後の展開ついて講義がおこなわれた。
前田哲男(染井・前田・中川法律事務所 弁護士)
クリエイティブ産業にかかわる権利の種類や構造、実際の法的判断について、弁護士として著作権問題を扱う前田氏に講義いただいた。
美山良夫(慶應義塾大学アート・センター)
本講座は、(社)日本レコード協会の寄附により、慶應義塾大学アート・センターの設置講座として昨年度から開講している。全26回の講義で20名のゲスト講師を招聘。第1回は慶應義塾大学文学部教授/アート・センター副所長の美山良夫より本講座の導入として、開講趣旨と(社)日本レコード協会の事業について説明。今後の社会におけるクリエイティブ産業の重要性を紹介した。
講義記録担当:池田あすか