安藤士《水球部レリーフ》修復
本作品は、慶應義塾大学経済学部在学中の 1943(昭和 18)年に学徒出陣した塚本太郎氏をモデルに、安藤士が制作したもので 1992(平成 4)年、塚本氏の遺族より体育会水泳部に寄贈された。オリジナルの表面に後から塗料が塗られていることから、その除去と修復の処置を行った。
●作品
作者=安藤士
作品=水球レリーフ
制作年= 1947(昭和 22)年
材質・技法=石膏、塗料
寸法= 616 × 893 × 105 mm
額寸法:775 × 1,017 × 176 mm
重量=作品、13kg 総重量、30kg
修復記録
2021 年 3 月 3 日
修復研究所 21 所長 渡邉郁夫
*担当者:宮﨑安章
*作業日:2018 年 10 月 11 日から 2021 年 3 月 10 日
●処置前の状態
・石膏の表面に塗料が塗られて仕上げられている。青色(スカイブルー)の塗料が全面に塗られていた。
・側面は青色が塗られておらず、濃緑色(オリーブグリーン)の塗料があり、オリジナルの色と考える。
・制作当時に近い時期の記念写真を福澤センターで見せて頂き、比較的暗い色調の作品であることは確認出来ていたので石膏自体の白色ではないと考えている。オリジナルの色調は青銅製品をイメージした仕上がりになっていたと考える。
●修復処置内容
・基底材の石膏は経年による劣化が進んでいる箇所がある。側面、特に底面は気泡状の穴が多数あり、膠水を染み込ませて固着を行った。
・旧処置の塗料除去は有機溶剤の混合液を綿棒に含ませて、少しずつ取り除いた。
・表面の凹みに詰まった絵具は先の細いナイフもしくは針状の道具で物理的に削り取った。
・使用した溶剤 キシレン+アセトン(3:2 / 容積比)
・また青色の下層に白色塗料が確認出来た。青色を除去すると全面に濃緑色(オリーブグリーン)があり、その下層に金色の絵具層があることが判った。
・石膏の破損や欠損は周辺に多数あり、取り扱い時の破損軽減と耐久性を考慮して、エポキシ樹脂パテを使用して、充填整形を行った。凹状の溝に入り込んだ塗料はニードル等で可能な範囲で取り除いた。
・彩色剥落箇所の補彩(リタッチ)を溶剤型アクリル樹脂絵具を使用して行った。
・70 年経過した石膏の経年劣化と重量を考慮し、三重構造の額縁を新調した。
写真は左から
図 1 修復前 表
図 2 修復中 旧塗料除去作業
図 3 修復中 充填整形 上面
図 4 修復後 額つき 表
図 5 修復後 額つき 裏
Date
2021年3月3日
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- Introduction to Art Archive XXVII: Correspondence-Poetry or Letters and Affects—Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
- ラーニング・ワークショップ「放送博物館」で考えるーアナログ技術のこれまで・これから
- Ambarvalia XIV: Junzaburo and the Fukuiku: A Fresh Look at Modernism and Its Impact
- The 39th Anniversary of Hijikata Tatsumi’s Death: Talking together about Hijikata Tatsumi