和田嘉平治 作 《福澤諭吉像》石膏原型修復およびFRP 像製作
本石膏像は、慶應義塾端艇部合宿所に置かれていたものであり、大分県中津市の福澤生誕記念館に戦前置かれていた彫像の石膏原型である。作者・和田嘉平治は深く福澤を敬愛し、誰に依頼されたわけでもなく昭和5年に福澤像を制作し、これが中津市の福澤旧居跡に設置された。しかし太平洋戦争中の金属供出によりこの彫像は失われた。戦後、同じ台座の上に改めて制作されたものが現在、大分県中津市の福澤諭吉旧居・福澤記念館に設置されている。この再制作の際の石膏原型は、和田嘉平治の孫、和田正泰氏により1997年ごろ、嘉平治旧宅とアトリエの解体時に慶應義塾に寄贈された。 埼玉県戸田市の端艇部合宿所にあった石膏原型は、初代つまり金属供出にて失われてしまった胸像の原型であり貴重なものである。
2017年度は本石膏像の仮修復が行われ、さらに元の設置場所である端艇部に設置するためのFRP像のためにこの原型からシリコン型取りをした。2018年度はFRP像を制作し、端艇部合宿所に設置することができた。また、石膏原型は本修復を施したのち、三田キャンパス東館倉庫に移送し、保管のための処置が施された。
保存修復作業記録
2018年3月25日 ブロンズスタジオ 担当者 高橋裕二
2018年6月25日 ブロンズスタジオ 担当者 高橋裕二
作品
・作品=福澤諭吉先生胸像
・作者=和田嘉平治
・制作年=1932(昭和7)年
・材質・技法=石膏、着彩
・寸法=115.0×103.0×60.0 cm
【作業前の状態・表面の状態】
2018年
・石膏胸像にこげ茶色の着彩が施されたもので、木製台座(濃いこげ茶色)に固定されず設置されていた。
・全体にスクラッチ、突き傷が多数目視され、着彩層のかすれや石膏の表層剥離が目立った。欠落箇所も多く、鼻は修理痕が目立ち、地山の陥没箇所には粘性充填剤で応急の穴埋めがされていた。
・左耳上部は破損しており、割れた部品を透明テープで貼り付けられていた。調査日の状態
・亀裂もかなり目視され、亀裂にはハグミ(ずれ)箇所が複数みられた。
・右袖前面角、そのほかの袖角、地山のそれぞれの角、地山底面などに欠損があり、特に右 袖前面角は元の形状が予測できない状態となっていた。
2019年
・石膏胸像にこげ茶色の着彩が施されたもので、木製台座(濃いこげ茶色)に固定されず設置されていた。
・全体にスクラッチ、突き傷が多数目視され、着彩層のかすれや石膏の表層剥離が目立った。欠落箇所も多く、鼻は修理痕が目立ち、地山の陥没箇所には粘性充填剤で応急の穴埋めがされていた。
・左耳上部は破損しており、割れた部品を透明テープで貼り付けられていた。
・亀裂もかなり目視され 、亀裂にはハグミ(ずれ)箇所が複数みられた。
・右袖前面角、そのほかの袖角、地山のそれぞれの角、地山底面などに欠損があり、特に右袖前面角は元の形状が予測できない状態となっていた。
(端艇部引き取り後の調査所見、2017年度)
【作業内容】
2018年
【仮補整】
・ ブロンズスタジオに輸送したのち、FRP像制作のためのシリコン型取りを行った(2017年11月~2018年2月)仮補整作業として以下の材料を用いた。充填材―石膏、ノリタケカンパニーリミテッド(HS-750)補強材料―スタッフ(麻繊維)
【シリコン型取り】
・2018年3月、主な使用材料は下記。シリコン樹脂―信越化学工業製(KE-12)石膏―ノリタケカンパニーリミテッド(HS-750)
【今後の処置】
・シリコン型をもとに、FRP像を制作し、端艇部合宿所へ設置する。
・石膏原型はシリコン型取り後の作業ダメージが見られるので、底面の面出しや固定用材取り付けが必要となる。最終的な形状補整と補彩を行ったのち、三田キャンパスへ移送、保管となる。石膏の表面層剥離
・欠落箇所等仮補整作業 穴埋め材の除去シリコン型完成スタッフ(麻繊維)を仮接着し石膏で補填
2019年
【FRP像の製作】
・昨年度に行ったシリコン型に顔料入り不飽和ポリエステル樹脂を塗り込んだ。
・硬化剤を混ぜながら、塗り込みを行った。
・内側にガラスマットを貼りこみ、ポリエステル樹脂を含浸させていった。
・前面と背面の型を貼り合わせた。
・シリコン型から抜き、形状を補整し、光沢や色彩を調整した。
【FRP像 戸田の端艇部合宿所に設置】
2018年6月21日
・木製台座の中に、穴を2箇所開け、座金
・ナットで固定した。
【石膏原型像の修復】
2018年5月~6月
・像に固定用材を取り付け、裏打ちをした。
・底面の平出し作業。・表層剥落部分の補整、石膏充填を行った。
・補彩を施し、修復を完了した。
【石膏原型像を三田キャンパスへ移送、保管】
2018年8月
・保管用の木枠を製作した。
・東館倉庫へ搬入したのち、保管用に透明ラップを巻き、木枠を固定した。
写真は左から
写真1:調査日の状態
写真2:石膏の表面層剥離・欠落箇所等
写真3:仮補整作業 穴埋め材の除去
写真4:スタッフ(麻繊維)を仮接着し石膏で補填
写真5:シリコン型完成
写真6:FRP 像製作 シリコン型に樹脂を塗り込む
写真7:FRP 像製作 塗り込み完了
写真8:FRP 像製作 カシュー塗料による色調調整
写真9:FRP 像 端艇部合宿所に設置完了
写真10:石膏像 表層剥落部分の補整
写真11:石膏像修復完了
写真12:三田キャンパス東館倉庫 設置
Date
2017年10月~2018年3月31日
2018年4月~6月
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- 舞踏家・上杉満代による舞踏ワークショップ「呼吸を遊び 体と遊び 床を踏む!」
- Keio University Mita Campus Architecture Open Day
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
- インクルーシヴ・プログラム 「きょうの料理」でめぐる100年!ツアー
- Papier Plié 02: Correspondences between Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins — Margin and Blank