旧ノグチ・ルーム(萬來舎)の保存修復処置
2007年度に家具に加えて室内床面等を集中的に修復、保存処置を施し、その後は室内環境の改善につとめ、週に一回の定期的な清掃および空調稼働を行ってきた。また床面のメンテナンスとしては年に一度、秋ごろに油性床用ワックスの塗布を学校校舎の通常メンテナンスの範囲で行なっている。さらに2011年度には家具カバーを設置、紫外線フィルムを全窓面に設置したことで、保存状態が飛躍的に改善された。
本年度の保存修復は以下の通りである。通常非公開となっている旧ノグチ・ルームであるが昨今はさまざまな催事や授業時にも利用されるなど、以前よりも使用頻度が高いゆえ、時折、不適切な使用によって床等にダメージを与えることがある。本年度は、10月に開催した催事の際に、多少不適切な使用があり、若干のダメージが床面に生じた。この対応として、定期ケア以前に、緊急的に補修を依頼した。むろん、定期的な状態調査および保存処置は必須である。
保存修復作業記録
2019年2月20日修復研究所21所長 渡邉郁夫/担当者:宮﨑安章
【作業前の状態・表面の状態】
・2019年2月4日に三田キャンパス第二研究室「新萬来舎/旧ノグチ・ルーム」の修復点検を行った。床全面と各家具、衝立、衝立裏の棚を清掃した後に保護ワックスを塗布した。
・家具類の点検は2017年12月4日~6日に修復を行った箇所を中心に行い、また平成30(2018)年10月11日~12日に粘着テープ等によって剥離したワックスの補修箇所も確認した。
【作業内容】
・直射日光があたり劣化箇所が顕著であった《テーブル》《腰掛(大)》《腰掛(小)》《座敷の敷物》は注意深く観察を行った。紫外線カットフィルムを窓ガラスに貼ったことによる有害紫外線の遮蔽効果は非常に大きく、目視での確認ではあるが、前回の点検時と比べても大きな変化はなく、劣化の進行は抑えられている。また継続的に室内の空調や各家具にかけた紫外線カットカバーの効果は大きいと考える。
・テーブルは清掃後、蜜蝋を主成分とした家具用ワックスを塗布した。
・腰掛(大)(小)は敷物と背もたれを刷毛で清掃した後にテーブルと同じワックスを塗布した。
・籐の敷物も外して掃除機を使って清掃を行った。
・床部はポリプロピレン紙のモップで清掃した後に、市販のフロアー用水性ワックスを4回塗布した。
・腰掛と奥の座敷に敷かれている敷物も、直射日光があたっている箇所も以前のような、表皮が剥がれる様な劣化は観察できなかった。腰掛(小)の背もたれの縄の劣化も、新調し補彩を施した縄も、褪色など特に変化はない。腰掛(大)の背もたれの縄の一部に摩耗した箇所がある。
・直射日光があたる《テーブル》《腰掛(大)》《腰掛(小)》《座敷の敷物》は表面の変化や劣化があるか経過観察を続け、必要に応じて修復処置を行う。また旧ノグチ・ルームの公開等を行う場合《テーブル》《腰掛(大)》《腰掛(小)》は長時間日光に当たり表面温度が上昇し、劣化の大きな要因となるため、遮光するための衝立などを設置すると保存環境が改善されると考える。補彩後に水性樹脂ワックスを 4 度塗布
・茶托の天板に角が破損しているが、旧充填箇所が外れており、オリジナルは損傷していなかった。エポキシ樹脂パテで充填した後に溶剤型アクリル絵具で補彩を施した。
・衝立裏の棚に取り付けられている格子の枠が3枚あり、入口側の2枚の桟が破損、欠損しており、破損部は膠水を使って仮接着を行った。塗布ワックス:NEW V-COAT(ニューV・コート)第一化学工業所(製造) タイカ商事(販売)
・東側(部屋の奥)の壁、化粧板の剥落箇所の処置については、昨年の作業で合板の浮き上がりは見当たらなかった。合板の剥落箇所の充填整形を行い、補彩を施すか、検討が必要である。
写真は左から
写真1:修復前 床 補修から 4 ヶ月の経過からは状態良好
写真2:修復中 《腰掛け(小)》清掃およびワックス塗布
写真3:修復中 《腰掛け(大)》藤の敷物をずらし掃除およびワックス塗布
写真4:修復中 床 補彩後に水性樹脂ワックスを 4 度塗布
写真5:修復中 書棚下の格子枠 破損箇所を膠水で仮止め処置
Date
2019年2月4日
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- Introduction to Art Archive XXVII: Correspondence-Poetry or Letters and Affects—Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
- ラーニング・ワークショップ「放送博物館」で考えるーアナログ技術のこれまで・これから
- Ambarvalia XIV: Junzaburo and the Fukuiku: A Fresh Look at Modernism and Its Impact
- The 39th Anniversary of Hijikata Tatsumi’s Death: Talking together about Hijikata Tatsumi