旧ノグチ・ルーム(萬來舎)の保存修復処置
2007年度に家具に加えて室内床面等を集中的に修復、保存処置を施し、その後は室内環境の改善につとめ、週に一回の定期的な清掃および空調稼働を行ってきた。また床面のメンテナンスとしては年に一度、秋ごろに油性床用ワックスの塗布を学校校舎の通常メンテナンスの範囲で行なっている。さらに2011年度には家具カバーを設置、紫外線フィルムを全窓面に設置したことで、保存状態が飛躍的に改善された。
本年度の保存修復は以下の通りである。通常非公開となっている旧ノグチ・ルームであるが昨今はさまざまな催事や授業時にも利用されるなど、以前よりも使用頻度が高いゆえに、定期的な状態調査および保存処置は必須である。 また本年度は、ニューヨークのイサム・ノグチ財団からも要請されていた英語表記のエングレーヴィングによるキャプション(「BANRAISHA」)も設置した。
保存修復作業記録
2017年12月12日 修復研究所21 宮﨑安章/担当者 宮﨑安章
【作業前の状態・表面の状態】
平成29(2017)年12月4日から12月6日に三田キャンパス第二研究室「新萬来舎/旧ノグチ・ルーム」の修復点検を行った。 部屋使用によって床の保護ワックス剥落し、清掃時に旧ワックスと板の色もきれいになってしまい、周囲との明暗差が出来てしまっていた。剥落箇所の補彩を行い、床全面に保護ワックスを塗布した。 点検は平成29(2017)年2月1日に修復を行った箇所を中心に行った。特に直射日光があたり劣化箇所が顕著であった《テーブル》《腰掛(小)》《座敷の敷物》は注意深く観察を行った。昨年修復を行ったテーブルは柔軟性を高めるためにエレミ樹脂を調合したマスチック樹脂ワニスを塗布した事も剥離等の防止に繋がっている。紫外線カットフィルムを窓ガラスに貼ったことによる有害紫外線の遮蔽効果は非常に大きく、目視での確認ではあるが、前回の点検時と比べても大きな変化はなく、劣化の進行は抑えられている。また継続的に室内の空調や各家具にかけた紫外線カットカバーの効果は大きいと考える。
【作業後の所見】
・家具類:テーブルは清掃後、密蝋を主成分とした家具用ワックスを塗布した。腰掛(大)(小)は敷物と背もたれを刷毛で清掃した後にテーブルと同じワックスを塗布した。
・床部:ポリプロピレン紙のモップで清掃した後に、粘着テープを剥がす際にワックス剥落箇所が数箇所あり、水性アクリル絵具で補彩を行った。市販のフロアー用水性ワックスを2回塗布した。腰掛と奥の座敷に敷かれている敷物も、直射日光があたっている箇所も以前のような、表皮が剥がれる様な劣化は観察できなかった。腰掛(小)の背もたれの縄の劣化も、新調し補彩を施した縄も褪色など特に変化はない。腰掛(大)の背もたれの縄の一部に摩耗した箇所がある。
・東側(部屋の奥)の壁:剝離(浮き上がり)と剥落した合板は、膠水(1:5)を注射器で注入し、ポリプロピレン紙を緩衝材として挟み、小型の電気アイロンで浮き上がり箇所を止めた。
・剥落した箇所の処置について:剥落箇所は充填して、補彩を行うか、応急処置として充填を行わず、補彩のみの処置にするか今後検討する。※塗布ワックス:NEW V-COAT(ニューV・コート) 第一化学工業所(製造) タイカ商事(販売)
直射日光があたる《テーブル》《腰掛(小)》《座敷の敷物》表面の変化や劣化があるか、経過観察を続け、必要に応じて修復処置を行う。次回点検時に表面温度の計測を行う。
写真は左から
写真1:蜜蝋を主成分とした家具用ワックスを塗布
写真2:床に補彩後水性樹脂ワックスを2度塗布
写真3:小型アイロンを用いた浮き上がり作業(緩衝材としてポリエステル紙を挟む)
写真4:修復後の床面
Date
2017年12月4日~12月6日
- 旧ノグチ・ルーム(萬來舎)の保存修復処置
- 伝ハイネ《ペリー提督黒船陸戦隊訓練の図(1854年)》の修復、科学分析調査
- 成田常吉撮影、江木支店福山館製《福澤諭吉肖像》の修復
- L.H Michael《THE INTERNATIONAL EXHIBITION DUBLIN》の修復
- G.Morton《THE NEW STEAM CARRIAGE 1828》W.Summers《THE “ENTERPRISE”STEAM OMNIBUS》の修復
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- 旧ノグチ・ルーム(萬來舎)の保存修復処置
- 岩田健《渚の姉弟》幼稚舎野外彫刻洗浄保存処置
- 伝ハイネ《ペリー提督首里城より帰還の図(1853年)》の修復、科学分析調査
What's on
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- Keio University Mita Campus Architecture Open Day
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