河野通勢 《箱根芦ノ湖風景》の修復
絵画修復報告書
2005年3月31日小林絵画保存修復工房・小林嘉樹
●作品
作者=河野 通勢
題名=箱根芦ノ湖風景
種類=油彩・キャンバス
制作年=不明
寸法=503×608×21mm
●作品の状態
・作品は市販の白色下地を施されたキャンバスに油絵具で描かれたもの。
・絵具層は乾性油分を抜き気味に使用した艶消しの仕上げ。
・白色を含む厚塗り部、特に背景の空部分に亀裂が多数発生している。樹木部分の彩色層には浮き上がりを伴う亀裂や剥落が目立つ。浮き上がりや剥落等の損傷部には油絵具による加筆が認められる。
・浮き上がり部分には接着固定をされた形跡は無く、損傷部分は直接加筆されている。制作者の手になる物か後補かは不明。浮き上がりの目立つ部分では絵具層の剥落の恐れがある。
・画面裏面共に埃汚れが認められる。ニスは塗布されていない。
・画面右下には「M.Kouno」と署名されている。
・木枠は中桟が一本入った日の字型、F12号の市販品。画布には一度張り替えられた痕跡があり、枠は制作当初の物ではない。木枠裏面には画題「箱根芦ノ湖風景」と、子息による極書「河野通勢筆 識 息 道明」がある。
・額裏板にも同様の極書をされた紙が貼られている。
・額に装着されたガラスには黴が発生している。額の構造は脆弱で、吊り金具や紐も充分な強度を満たしていない。
●処置の方針
・汚れの除去や損傷部分への最小限度の対症的な処置を行う事とする。
・低反射処理を施したフイルムを張り合わせたアクリルを装着した額を新調する。
・作品の額への固定の改善・裏板取り付け等の作業を行う。
●処置の概要
・調査記録
・絵具層の汚れ及び付着物の除去、損傷部分の剥落止め(D-8 エチレン化酢酸ビニール樹脂使用)
・画布裏面の清掃、画布の変形修正
・絵具損傷部分に充填補彩を行う(胡粉・膠・アクリルエマルジョン絵具使用)
・色調回復のため薄くニスを塗布する(パラロイドB-72樹脂7%トルエン溶液)
・額の新調(リアルックFN-72装着)
・作品の額装及び裏板の取り付け(旧額に貼られていた極書を移し替える)
・写真撮影及び報告書作成
写真は左から
写真1:河野通勢 《箱根芦ノ湖風景》修復前
写真2:河野通勢 《箱根芦ノ湖風景》修復後
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- 舞踏家・上杉満代による舞踏ワークショップ「呼吸を遊び 体と遊び 床を踏む!」
- Keio University Mita Campus Architecture Open Day
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
- インクルーシヴ・プログラム 「きょうの料理」でめぐる100年!ツアー
- Papier Plié 02: Correspondences between Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins — Margin and Blank