須田寿《家鴨》の修復
本作品は1949(昭和24)年から1951(昭和26)年まで慶應義塾女子高および中等部に置いて美術教育にあたられた洋画家須田寿氏より中等部へ寄贈されたものである。中等部の管理のもと会議室に展示されていたが、作品に甚だしい汚損が認められたため、アート・センターを通じて専門家に修復を依頼することとし、小林絵画保存修復工房・小林嘉樹氏が作業を担当した。
修復報告書
1999年9月15日
小林絵画保存修復工房・小林嘉樹
●作品
作者=須田寿
作品名=家鴨
材質・技法=油彩・キャンバス
制作年=1947(昭和22)年
寸法=801×1161×24cm
作品は、木枠(画面に垂直方向に中桟1本、くさびなし)に張られた油性白色の下地が施された既成のカンバスに描かれている。
カンバスの目数は1cm四方経糸緯糸共に平均して16本。画面左下隅に赤茶色の絵具による署名「Hisashi.Suda」と年記「1947」がある。
作品裏面、画布右上と木枠下辺右端に付票の剥がされた残欠がある。
●作品の状態
- 画布の張りは弱く釘打ちの間隔の広い部分もある。そのため画布には波打つような変形が認められる。そのため画布には波打つような変形が認められる。画布の耳は幅が狭く以前の貼り直し時の裂け傷も随所に認められる。
- 画面保護のアクリルや裏板がなかったため、画面全体にかなりの埃汚れとやに汚れが見られ、画調が著しく歪められている。
- 絵具層は経年劣化により、非常にもろくなっている。
- 画布の収縮による絵具層の浮き上がりおよび剥落が著しく、非常に危険な状態である。
- 作品下辺右端近く、画布裏面と木枠の間に異物が挟まっている。
●処置の方針
- 画面の洗浄および剥落留めおよび画布の張り直しを行い、額装を改善する。
●処置の内容
- 調査記録および写真撮影
- 洗浄に先立つ仮剥落留め(膠水溶液使用)
- 汚れの除去
- 亀裂と浮き上がり部分の接着と固定
BEVA-371樹脂(エチレン化酢酸ビニール樹脂) トルエン溶液使用 - 木枠をはずして画布裏面と木枠の汚れ除去
- 画布耳の補強
- 画布の貼りなおし(楔付きに改善)
- 絵具剥落部分への充填補彩(膠水溶液・胡粉・アクリルエマルジョン絵具使用)
- 額の修理および額装改善(低反射アクリルと裏板の装着)
- 処置後写真撮影および調査書作成
以上
写真は左から
写真1:修復前
写真2:修復後
写真3:剥落留め作業中
写真4:絵具の浮き上がり・剥落部分
写真5:同部分、剥落留め処置後
Date
1999年9月15日
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- 舞踏家・上杉満代による舞踏ワークショップ「呼吸を遊び 体と遊び 床を踏む!」
- Keio University Mita Campus Architecture Open Day
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
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- Papier Plié 02: Correspondences between Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins — Margin and Blank