Symposium: Genetic Engine
慶應義塾大学アート・センターは、1998年に土方巽アーカイヴをパイロット・モデルとする「ジェネティック・アーカイヴ・エンジン」を起動し、アート・アーカイヴに対する取り組みを開始しました。以来、ノグチ・ルーム、瀧口修造、油井正一、西脇順三郎、草月アートセンターなどの資料をアーカイヴとして構築し、国内外の研究者の調査・研究に資する活動をおこなっています。
20年の節目となる2018年、この「ジェネティック・エンジン」の組成を改めて見直し、新たに組み替えるための一連の事業を展開しています。その一環として、本シンポジウムを開催する運びとなりました。
アート・アーカイヴは、一つの「ジェネティック・エンジン」です。個人や組織の記憶は、事実と個体的な感性が折り混ざりあった準資料であり、どこまでも個体の内部に留まり続けます。翻って一つの記録とは、外部化された記憶であり、アーカイヴは、この記憶と記録が交錯する地点に生成します。個人や組織が関与した過去の出来事の遺伝的要素を宿しながら、アーカイヴはそれらの出来事を、新たな、また多様なパースペクティヴに基づき、再び発生させるエンジンだと言えるでしょう。
本シンポジウムでは、アーカイヴをめぐる構築・発信、運営、活用といった問題について、各領域より専門の方々を迎え、具体的な実践に即しながらお話いただきます。特別講演および各セッションの議論を通して、本シンポジウムが「ジェネティック・エンジン」としてのアート・アーカイヴについて再考するとともに、これからのアーカイヴを展望する機会となれば幸いです。
★ フライヤー(PDF, 1.9MB)
Date
Saturday 17 November 2018, 14:30-18:10
Venue
Keio University Mita Campus, North Building Hall
Audience
Open to everyone
Cost
Free participation
Enquiries and bookings
Keio University Art Center (Moriyama, Hashimoto)
Tel. 03-5427-1621
pj.ca.oiek.c-tra@5202
Discussion | Lecture[Genetic Engine]
Date
Saturday 17 November 2018, 14:30-18:10
Venue
Keio University Mita Campus, North Building Hall
Audience
Open to everyone
Cost
Free participation
Booking
No reservation necessary
Lecturer/Performer
Takashi Mikuriya
Yoshizumi Higuchi
Michiko Yamakawa
Tomohisa Sato
御厨貴(みくりや・たかし)
東京大学先端科学技術研究センター客員教授
1951年生れ。1975年東京大学法学部卒。東京都立大学、政策研究大学院大学、東京大学、放送大学の教授を勤める。日本政治史、公共政策、オーラル・ヒストリー、権力の館を専門とする。著書『オーラル・ヒストリー』(中公新書、2002年)、『権力の館を歩く』(ちくま文庫、2013年)など。
樋口良澄(ひぐち・よしずみ)
関東学院大学国際文化学部客員教授、明治大学唐十郎アーカイブ運営委員
1955年生まれ。演劇、アート、文学の批評、プロデュ―ス等を行なっている。 著書に『木浦通信』(吉増剛造との共著、矢立出版、2010年)、『唐十郎論』(未知谷、2012年)、『鮎川信夫、橋上の詩学』(思潮社、2016年、小野十三郎賞受賞)など。
山川道子(やまかわ・みちこ)
株式会社プロダクション・アイジーアーカイブグループリーダー
東京都生まれ。制作進行として現場を経験した後、2002年に広報に異動となり、周年事業を切っ掛けにアーカイブの道に進む。
佐藤知久(さとう・ともひさ)
京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授
1967年生れ。専門は文化人類学。主な著書に『コミュニティ・アーカイブをつくろう!——せんだいメディアテーク「3がつ11にちをわすれないためにセンター」奮闘記』(共著、晶文社、2018年)など。
Timetable
イントロダクション「アーカイヴ論はいま」
粂川麻里生(慶應義塾大学アート・センター副所長・同大学文学部教授)
セッション1 「上演芸術のアーカイヴ——大学の現場から」
樋口良澄(関東学院大学国際文化学部客員教授・明治大学唐十郎アーカイブ運営委員)
聞き手:森下 隆(慶應義塾大学アート・センター所員)
セッション2 「アーカイヴとパトロネージ」
山川道子(株式会社プロダクション・アイジー アーカイブグループリーダー)
聞き手:本間 友(慶應義塾大学アート・センター所員)
セッション3 「創造的/ジェネティックなアーカイヴの現在」
佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授)
聞き手:渡部葉子(慶應義塾大学アート・センター教授/キュレーター)
コーヒーブレイク
質疑セッション
特別講演「オーラル・ヒストリーの広がりと深まり——アーカイブの視点を交えて——」
御厨貴(東京大学先端科学技術研究センター客員教授)
Enquiries and bookings
Keio University Art Center (Moriyama, Hashimoto)
Tel. 03-5427-1621
pj.ca.oiek.c-tra@5202
Organiser(s)
Organiser: Keio University Art Center
内容紹介
開場
開会の挨拶 内藤正人(慶應義塾大学アート・センター所長・同大学文学部教授)
イントロダクション「アーカイヴ論はいま」
粂川麻里生(慶應義塾大学アート・センター副所長・同大学文学部教授)
セッション1 「上演芸術のアーカイヴ——大学の現場から」
樋口良澄(関東学院大学国際文化学部客員教授・明治大学唐十郎アーカイブ運営委員)
聞き手:森下 隆(慶應義塾大学アート・センター所員)
小劇場運動、あるいはアングラ運動が噴き上がった時代から、すでに半世紀を超えています。この運動を中心的に担った唐十郎の状況劇場と土方巽の暗黒舞踏は、その表現の独創性においても、後代への影響力においても破格であり、1960年代以降の日本の上演芸術を考察する上で欠くことのできない存在です。しかし、今なお十分に解明されているとは言えないその活動を評価し継承するためにも、残された資料は貴重です。現在、唐十郎の演劇資料は明治大学に、土方巽の舞踏資料は慶應義塾大学にと、それぞれ保存されています。このシンポジウムでは、上演芸術のアーカイヴ構築をめぐって具体的な事例も含めて、さまざまな課題をめぐって討議します。
セッション2 「アーカイヴとパトロネージ」
山川道子(株式会社プロダクション・アイジー アーカイブグループリーダー)
聞き手:本間 友(慶應義塾大学アート・センター所員)
芸術制作は、パトロンの存在を抜きにして語ることはできません。時代に応じてその関係性を変化させながら、様々なパトロンたちが、芸術の創造を支えてきました。では、芸術制作に深く関わる資料を保持するアート・アーカイヴにおいては、パトロネージはどのような姿で現れるのでしょうか。本セッションでは、制作の現場で展開する株式会社プロダクション・アイジーのアーカイヴの取り組みを参照しながら、アーカイヴとパトロネージという切り口で、アーカイヴにとって、パトロンの役割とは何か、アーカイヴが何に支えられ、何を支えているのかを検討します。
セッション3 「創造的/ジェネティックなアーカイヴの現在」
佐藤知久(京都市立芸術大学芸術資源研究センター准教授)
聞き手:渡部葉子(慶應義塾大学アート・センター教授/キュレーター)
アーカイヴが資料を保管、整理するだけの場ではなく、いかに創造的思考を刺激する場として機能することができるか。更に、アーカイヴ利用により生まれた研究成果をアーカイヴへフィードバックすることによって、アーカイヴ自体が成長していくこと。――これらは、20年にわたる芸術資料を対象としたアーカイヴ活動の実践において、慶應義塾大学アート・センターが挑んできた課題、問いかけであると言ってよいでしょう。芸術作品が生み出される現場でアーカイヴを実践する京都市立芸術大学芸術資源研究センターでも「創造のためのアーカイヴ」が志向されています。それぞれの具体的な取り組み例を取り上げて考えることによって、アーカイヴの創造的可能性について議論していきたいと思います。
コーヒーブレイク
質疑セッション
特別講演「オーラル・ヒストリーの広がりと深まり——アーカイブの視点を交えて——」
御厨貴(東京大学先端科学技術研究センター客員教授)
閉会の挨拶 内藤正人
What's on
- SHOW-CASE PROJECT Extra-1 Motohiro Tomii: The Presence of Objects and Matters
- Introduction to Art Archive XXVII: Correspondence-Poetry or Letters and Affects—Shuzo Takiguchi and Shusaku Arakawa/Madeline Gins
- Correspondences and Hyōryūshi [Drifting-poetry]
- ラーニング・ワークショップ「放送博物館」で考えるーアナログ技術のこれまで・これから
- Ambarvalia XIV Junzaburo and the Fukuiku: A Fresh Look at Modernism and Its Impact
- The 39th Anniversary of Hijikata Tatsumi’s Death: Talking together about Hijikata Tatsumi